70歳以下の患者さんにはくも膜下出血の予防処置が可能

未破裂脳動脈瘤が破裂して「くも膜下出血」を起こしてしまうと、血管が細く閉じる「血管攣縮」や、脳組織に水分が過剰に溜まってむくみがおこる「脳浮腫」が起きる恐れが大きく、それらが原因になって身体の麻痺や意識障害などの合併症が3人に1人の割合で出るとされます。

コイル塞栓術で破裂を予防

出血を起こしていない未破裂の脳動脈瘤なら血管攣縮や脳浮腫の心配はありません。そこで、くも膜下出血の予防として、未破裂脳動脈瘤を破裂する前に処置する方法があります。

治療に伴う合併症の可能性もあるため、手術の決定にあたっては、動脈瘤の大きさ、部位による手術の危険性と未破裂脳動脈瘤の自然経過を比較した上で判断します。

一般には動脈瘤の最大径が5mmより大きく、硬膜(脳と脊髄を覆う髄膜のうち、一番外にある膜)の内側にあり、患者さんの年齢が70歳以下の場合に手術的治療を考慮します。

手術を選択しない場合は脳動脈瘤の大きさ、形の変化の観察が必要です。経過観察、観察項目の確実な知見はまだありませんが、一般的に1年以内に経過観察を行い、増大が認められれば手術が勧められます。

脳動脈瘤は未破裂の段階では症状がないため、外見は健康です。そのため患者さんは「手術は上手くいって当たり前」という気持ちが強くあります。その一方で、脳外科医側には「手術自体は破裂した動脈瘤よりも簡単だが成功して当たり前というプレッシャーが強い。運悪く後遺症が残ったら訴えられかねない」という考えを持つ人もいます。

いずれの選択肢を選ぶにしても、担当医とよく話し合って患者さん自身が納得することが大切です。くも膜下出血の危険因子として喫煙習慣、高血圧、過度の飲酒が知られているため、これらの是正に努める必要もあります。

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