開頭せずにクモ膜下出血を治療するコイル塞栓術
くも膜下出血は脳動脈瘤(コブ)が破裂して起こります。いったん出血が止まっても、放っておくと再び破裂する恐れがあります。そのため、再出血を防ぐ治療が必要となります。
頭蓋骨の一部を切り開き、脳動脈瘤の根元を金属製のクリップで挟んで血流を遮断する「開頭クリッピング術」は従来から行なわれていますが、最近は「コイル塞栓術(血管内治療)」が急速に普及しています。
コイル塞栓術では、脚の付け根の血管などから入れたカテーテルを、医師が画像で確認しながら脳の動脈瘤まで送り込み、先端から出したプラチナ製のコイルを動脈瘤内に詰めて留置する治療法です。コイルを詰めることで動脈瘤への血流を途絶えさせ、再出血を防ぐのです。
コイル塞栓術はクリッピング術と比較して体への負担が軽く、お年寄りでも受けることができます。また、脳の奥にある動脈瘤などクリッピング術では難しい部位の治療も可能です。
さらに、血管攣縮のリスクが少ないので、クモ膜下出血を発症してから72時間以上経過しても実施が可能という特徴があります。治療に要する時間は2〜3時間ほどです。
コイル塞栓術は新しい治療法のため、長期的な予防効果が明らかでない、まれにコイルの隙間から出血するなどの問題があります。そのため、患者さんの状態を見極めた上で、コイル塞栓術を行うか、従来からのクリッピング術を行なうかを慎重に判断します。