徳永英明さんも経験された「もやもや病」は特定疾患(難病)です
脳内には、脳細胞に酸素や栄養を運ぶための動脈網が作られています。その中心となっているのが、ウイリス動脈輪と呼ばれる動脈血管です。
この動脈血管が何らかの原因で閉塞して血流が滞ったために、バイパスとして異常な細い動脈が無数に作られる病気がもやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)です。脳ドックでは、この病気も早期に発見することができます。
停滞した血流を十分補うだけのバイパス血管が作られれば問題ないのですが、実際には十分な血管網が張り巡らされていなかったり、血管自体が脆く出血しやすいという問題があります。そのため、脳の血流が一時的に減少したり、出血を起こして病院で検査を受けたところ、もやもや病が発見されることがあります。
歌手の徳永英明さんがこの病気と闘っておられたことを公表したことにより、一気にこの病名が広がりましたが、軽いネーミング(?)のため、それほど大変な病気とは認識されていないようです。
しかし、この病気は厚生労働省によって特定疾患(難病)に指定されています。無症状で経過し、言語障害や脱力発作を起こしたり、脳梗塞や脳出血を起こす危険性があります。
もやもや病が発症しやすい年代は30〜40代の成人と10歳以下の子供となっています。成人の患者さんでは、もやもやしたバイパス血管が出血して、脳出血やくも膜下出血を起こす危険性があります。出血を起こした部位によっては、頭痛や嘔吐、片麻痺、意識障害などの症状が現れます。成人では女性の発症者が男性よりも多いのが特徴です。
症状から判断して、もやもや病が疑われる場合、MRI/MRAで血管の状態を確認したり、CTで突然起きた出血を調べることで、他の脳の病気との鑑別を行います。この病気は原因が不明なため、根本的な治療法はありません。
内科的には、虚血状態(血管の狭窄・閉塞で血流が滞った状態)を改善するため、抗血小板薬、抗凝固薬、血管拡張薬の投与を行います。外科的には、脳への血流量を増やすための手術、もやもや状の血管への負担を軽減するためにバイパスを作る手術が行われます。
もやもや病による長期の療養を経済的な側面から支援するために、医療費の公的負担制度が実施されています。保健所への申請には医師の診断書や住民票などが必要となりますが、自治体によって多少の違いがあります。