脳ドックは脳動静脈奇形の発見にも有効です
血管は、太い動脈から次第に枝分かれして細くなり、最終的には毛細血管となって細胞に酸素と栄養を届け、静脈の毛細血管へとつながっていきます。脳動静脈奇形は、この毛細血管を介することなく、脳の動脈と静脈の一部が異常な血管で直接繋がってしまっている先天性の病気です。この異常な血管の塊は「ナイダス」といいます。
動脈の血液は毛細血管を介して静脈へと流れますが、脳動静脈奇形では、動脈の勢いがある血液が、毛細血管を通ることなく静脈に直接流れ込むため、静脈内の圧力が高まり、血管が破れて出血することがあります。
出血を起こした部位によって、頭痛や嘔吐、意識障害などの「くも膜下出血」の症状が現れたり、手足の麻痺といった「脳内出血」の症状が現れます。出血を起こしていない脳動静脈奇形でも、1年間に2〜4%が出血が起きるとさてています。出血がなくても周囲の脳の活動に悪影響を及ぼすることで、けいれん発作が起きるリスクもあります。
くも膜下出血や脳出血で病院に搬送されて、MRI/MRAやCT検査で脳動静脈奇形が初めて発見されるケースが全体の約70%を占めています。脳ドックの画像診断ならば、出血してない段階の脳動静脈奇形を発見することが可能なので、無症状の段階で対処することができます。
脳動静脈奇形は先天的に動脈と静脈がつながっているため、薬による治療でどうにかなる病気ではありません。治療は脳動静脈奇形の破裂による出血を予防する目的で手術を実施します。
既に出血を起こした脳動静脈奇形の場合でも、再出血のリスク低減を目的として手術が選択されます。手術には以下に挙げる「開頭手術」「放射線治療(ガンマナイフ)」「カテーテルによる塞栓術」の3つの方法があります。
開頭手術
脳血管にヨード系造影剤を注入して、X線撮影することで、脳の動脈・静脈・毛細血管の状態を診断する検査(DSA:脳血管造影)を実施した後、開頭をして脳動静脈奇形が起きている部分を正常な血管から遮断し、摘出を行います。脳動静脈奇形は病巣の部位や大きさによって、手術で安全に全部摘出が可能なものから、治療が困難なタイプまでグレード分類されています。
放射線治療(ガンマナイフ)
手術で摘出が難し場合は、放射線治療が選択されます。微小な病変でも集中的に放射線を照射できるガンマナイフと呼ばれる治療法は、動静脈奇形を閉塞させるうえで有力です。
カテーテルによる塞栓術
大腿動脈から挿入したカテーテル(細い管)を頭部の病変部位の血管まで誘導します。そして血管を閉塞する液体の薬をカテーテルの中から送り込んで、脳動静脈奇形本体とそこに血液を送っている血管を閉塞します。開頭手術に比べて患者さんへの負担が少ない治療法ですが、脳動静脈の状態によっては開頭手術やガンマナイフ治療と組み合わせることもあります。