健康保険の対象外となる脳ドックの費用は4万円以上が相場

働き盛りの年代にも見つかる「隠れ脳梗塞」や「未破裂脳動脈瘤」、「脳の萎縮」が不安になり、「脳ドックを1回受けてみようかな」とお考えの方は少なくありません。その際、やっぱり気になるのが「検査費用(料金)はいくらかかるのか?保険は使えるのか?」ということです。

補助金を有効活用

脳ドックの費用は、検査を実施する施設(脳神経外科、総合病院、医療センターなど)、検査項目の数によって違いはありますが、4〜9万円が一般的になっています。

ちなみに日本脳ドック学会が医療機関を対象に実施した調査(2002年)では、脳ドックの平均費用は47,500円でした。

通常の医療費に比べて「高い!」と感じた方も少なくないと思いますが、脳ドックはあくまでも無症状の人のための健診ですので、健康保険は適用されず、自由診療の扱いとなり費用は全額自己負担となるためです。

忙しくて検査を受ける時間がない方を対象とした簡易脳ドックでは、脳の断面を撮影するMRI、脳の血管を立体的に描き出すMRAのみのシンプルなコースも登場しており、この場合は検査時間も30分程度で済み、費用も2万円台と低く抑えられています。

検査費用の比較表

上の表は新潟県にある脳神経外科の脳ドックの料金です。画像検査(MRI・MRA)だけを実施する「シンプル脳ドック」は20,520円となっており、そこから「脳ドック(56,160円)」、日本脳ドック学会が推奨する検査項目を満たした「プラチナ脳ドック(74,520円)」と検査項目が多彩になる比例して費用も上昇しています。

一方、オプション検査(アルツハイマー型認知症の検査など)を充実させたコース、人間ドックやレディースドック、がん検診の検査内容に脳ドックをプラスしたコースなどでは費用は高くなり、総額で10万円以上というところも珍しくありません。

人間ドックと組み合わせた検査

例えば、上の写真は東京都の病院の脳ドックですが、こちらは血液検査、腹部エコー、胃カメラ等の人間ドックの検査を組み合わせた内容となっており、費用は108,000円となっています。このように一口に脳ドックといっても費用は大きく異なってきます。

必ずしも「検査費用が高い=脳ドックの質も高い」というわけではないので、脳ドックを選ぶ際には費用を比較するだけでなく、ご自身の健康状態やニーズを考慮することが大切です。

例えば、「食生活の乱れ、飲酒、喫煙、運動不足、肥満などのツケが出始める40代になった」、「近親者に脳卒中になった人がいる」などに該当し、これまで脳の画像診断(MRI・MRA)を受けたことのない方は脳ドックを単体で受診するいい機会といえます。

また「高血圧や高血糖による動脈硬化など生活習慣病のリスクが本格的に高まる50代になった」、「がんの発症リスクがピークを迎える60代になった」などに該当し、これまで人間ドックを受ける機会がなかった方は脳ドックを含めて全身の健康状態を調べてもらうのもよいでしょう。

脳ドックの費用を健康保険組合や自治体の助成金で賢く節約

先述のとおり、脳ドックは自由診療の扱いとなるため、原則として検査費用は受診者が全額負担することになります。ただし、お勤めの企業が加盟する健康保険組合、お住いの自治体によっては脳ドックの費用の一部を助成しているところもあるため、上手に活用すれば脳ドックの費用を安くすることができます。

助成金の制度は健康保険組合や自治体で異なりますが、5,000円〜10,000円と金額を設定しているところと、「脳ドックの費用の○割を助成(但し、上限は×万円まで)」のように割合で設定されているところの2つのタイプがあります。

健康保険組合の補助金制度

上の写真は東証一部上場企業のサイトから脳ドックの助成金制度に関するページの一部をキャプチャーしたものです。助成金の上限が28,000円となっており、費用をかなり節約できます。脳ドックを受ける医療機関も被保険者が自由に選べることもでき、助成金制度としては理想的です。

脳ドックの助成金を受け取る手続きの一例としては、脳ドックを受診する→費用の全額を自己負担で支払う→指定の必要書類(領収書、脳ドックの検査結果など)を用意する→郵送で健康保険組合へ申請→承認後に振り込みがある、となっています。詳細はお勤めの企業が加盟する健康保険組合のホームぺージ等をご参照ください。

自治体の助成金は「40歳以上(あくまでも一例です)」、「健康保険の加入者」、「保険料を完納している(未納分がない)」、「同年度内に助成金制度を利用していない」などの簡単な条件を満たせば誰でも受け取ることができますが、脳ドックを受診できる医療機関が「任意(自由に選べる)」ではなく、自治体が指定する医療機関に限定されることが多くなっています。

お住いの市区町村の財政状況などの理由で脳ドックの助成金制度がないところもあります。

また「後期高齢者のみが対象」、「他の助成金(人間ドック、レディース検診など)も含めて2年に1回しか利用できない」、「MRIとMRAの画像診断のみが対象となる」、「脳ドックの受診後の申請は不可」など、細かい制限が設けられているところもあります。詳しくはお住いの自治体のホームぺージ等でご確認ください。

なお脳ドックで隠れ脳梗塞や脳動脈瘤、脳の萎縮、頸動脈の狭窄・閉鎖などの異常が発見された場合、その治療や再検査にかかる費用は健康保険の適応となります。

脳ドックの費用だけでなく検査体制の比較も重要です

脳ドックの医療機関を選ぶ際に注意したいのは、一部の割安な脳ドックでは医師による結果説明を省略して「検査結果は後日郵送」のみという施設があるということです。

脳神経外科の医師

脳卒中の発症リスクには家族歴、生活習慣、ストレスなども影響しますし、画像診断や血液検査を過去の記録と比較して数年〜10年単位で経過をみることも欠かせません。

したがって、担当医師からの説明なしに結果だけ「郵送」という形をとっている医療機関では、脳ドックのメリットを十分に享受することはできないのです。

「検査結果は郵送のみ」という施設では、担当医師による結果説明をオプションで用意している場合もありますが、別途料金が発生するので結局は通常の脳ドックと変わらない料金となってしまいます。

また、MRIやMRAなどの画像診断の「質」は医師に左右されます。画像診断に長けた放射線科医師がレポートを作成し、それをもとに専門医(脳神経外科医、神経内科医)が対面形式で検査結果の説明、生活習慣の改善点などのアドバイスを行ってくれるところがベストです。

さらにMRI装置の性能も重要です。MRIの画像の解像度はテスラ(T)という単位で表されますが、この数値が高いほど診断能力が高まり、検査時間も短くて済みます。脳ドックを選ぶ際には1.5テスラ(T)以上、理想は3.0テスラ(T)の装置がある医療機関を選びましょう。

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)でダメージを受けた脳の細胞は再生しません。その結果、言語障害、四肢の麻痺、寝たきりになるなど生活の質を大きく低下させてしまい、最悪の場合は死に至ることもある怖い病気です。

脳ドックを受診すれば、脳卒中につながる恐れのある病変(自覚症状のない「隠れ脳梗塞」、脳血管破裂のリスクがある「未破裂脳動脈瘤」)を早期発見して治療につなげることが可能です。

また脳梗塞やくも膜下出血の危険因子となる動脈硬化や高血圧、糖尿病などの有無を把握することで、生活習慣を改善するきっかけとなり、脳卒中を未然に防ぐこともできます。

これらを考慮すれば、脳ドックの料金は決して「高すぎる」ということはないと思いますが、いかがでしょうか。

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